
こんにちは!
今回は、中国の古典『孫子』に出てくる、
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」
という言葉を紹介します。
少し難しく感じますが、言っていることは意外とシンプルです。
仕事でも人間関係でも、「なぜかうまくいかない」と感じるときがありますよね。
そんなとき、もしかすると「相手のこと」も「自分のこと」も、よく分からないまま動いているのかもしれません。
今回は、身近なたとえ話を交えながら、この言葉の意味を考えてみます。
ことばの意味
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」
簡単に言えば、
相手のことも自分のことも分からないまま行動すると、何度やってもうまくいかない
という意味です。
ここでいう「彼」は、もともとは敵や相手のことです。
今の生活に置き換えるなら、仕事の相手や人間関係で関わる人などと考えると分かりやすいでしょう。
一方、「己」は自分自身のことです。
自分には何ができるのか。
何が苦手なのか。
どのくらいの時間や体力があるのか。
そこを分からないまま、「とにかく頑張ろう」と進んでしまうと、思ったような結果が出ません。
たとえば、仕事で新しいことを任されたとします。
「とにかく早く終わらせよう」と、いきなり作業を始める。
でも、相手が何を求めているのか分かっていない。
自分がどこまでできるのかも分かっていない。
これでは、頑張っているのに何度もやり直すことになってしまいます。
逆に、
「相手は何を求めているんだろう?」
「自分には何ができて、何が苦手なんだろう?」
と考えてから動けば、無駄な苦労を減らせます。
つまり、この言葉は「もっと頑張れ」という教えではありません。
むしろ、
「頑張る前に、相手と自分を知ろう」
という教えなんです。
たとえ話
ここで、こんな話を考えてみましょう。
登場するのは、会社員のAさんとBさんです。
二人は同じ会社で働いていて、ある新しい仕事を任されました。
Aさんは、とても真面目です。
仕事を頼まれると、
「早く終わらせなければ」
と、すぐに作業を始めます。
ところが、しばらくすると問題が出てきました。
依頼した人が求めていたものと、Aさんが作ったものが違っていたのです。
Aさんは、
「ちゃんと頑張ったのに……」
と落ち込みます。
そこで今度は、もっと時間をかけて作り直しました。
ところが、また修正です。
Aさんは「もっと頑張らなければ」と考え、さらに作業を続けます。
一方、Bさんは少し違いました。
仕事を始める前に、
「今回、一番大事なのは何ですか?」
「完成したとき、どんな状態ならOKですか?」
と相手に確認しました。
さらに、自分が苦手な部分については、早めに相談します。
すると、Aさんより作業時間が短いのに、Bさんの仕事は一度でOKになりました。
二人の違いは、能力だけではありません。
Aさんは「自分が頑張ること」に意識が向いていました。
Bさんは「相手が何を求めているか」と「自分に何ができるか」を確認してから動いていたのです。
この話のように、
相手を知らず、自分も知らないまま進むと、努力しているのに空回りしてしまいます。
逆に、相手と自分を知っていれば、「どこに力を使えばいいか」が見えてきます。
これは仕事だけではありません。
人間関係でも同じです。
相手の性格や考え方を知らずに、
「どうして分かってくれないんだ」
とイライラする。
でも、自分の考え方やクセを振り返ってみると、
「自分も相手の話をちゃんと聞いていなかったかもしれない」
と気づくことがあります。
新しいことを始めるときも同じです。
「成功している人が毎日3時間やっているから、自分もやろう」
と考えても、自分の生活や体力に合わなければ続きません。
まず自分を知る。
そして、相手や状況を知る。
そのうえで、どう動くかを決める。
この順番が大切なんですね。
ことばの起源
この言葉は、中国の兵法書『孫子』に収められています。
作者は、春秋時代の兵法家として知られる**孫武(そんぶ)**です。
『孫子』の「謀攻篇」には、
「彼を知り己を知れば、百戦殆うからず」
という有名な言葉があります。
「相手のことを知り、自分のことも知っていれば、何度戦っても危険な状態にならない」という意味です。
そのあとに続くのが、
「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す」
そして、
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」
です。
つまり、
相手を知り、自分を知る。
これが大切なんですね。
相手のことだけ分かっていても、自分のことが分からなければ、判断を誤ることがあります。
逆に、自分のことだけ分かっていても、相手のことが分からなければ、うまく進まないことがあります。
相手と自分の両方を知ることで、どう動けばいいのかが見えてくる。
これが、この言葉の大切なところです。
もともとは戦いについて書かれた言葉ですが、現代では仕事や人間関係、経営、人生の選択などにも応用できる考え方として読まれています。
実際、『孫子』は日本でも長く読まれてきました。
武田信玄など、歴史上の人物にも『孫子』の影響が見られます。
昔の戦争の話だから今の自分には関係ない。
そう思ってしまいそうですが、よく考えると、
「相手を知る」
「自分を知る」
「状況を知る」
という考え方は、今の生活でもかなり使えます。
おすすめ書籍
『孫子の兵法』(著:守屋洋)
今回の言葉をきっかけに、『孫子』の考え方をもう少し深く知りたい方におすすめです。
難しい漢文をそのまま読むのではなく、「どうすれば勝てるのか」「無理な戦いをどう避けるのか」といった考え方を、現代の言葉で説明してくれます。
特に、「彼を知り己を知れば」という考え方を、仕事や人間関係にも応用して考えられるのが魅力です。
『孫子』そのものに興味はあるけれど、難しそうで手が出ないという人にも読みやすく、今回紹介した「相手を知り、自分を知る」という考え方を、さらに深く学べる一冊です。
まとめ
今回の言葉、
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」
は、
「相手のことも、自分のことも分からないまま進めば、うまくいかない」
という教えです。
何か問題が起きると、私たちはつい、
「もっと頑張らなければ」
と考えてしまいます。
でも、頑張る前に一度立ち止まってみる。
「相手は何を求めている?」
「自分には何ができる?」
「今の自分に、このやり方は合っている?」
そんなふうに考えるだけでも、無駄な努力を減らせます。
人生は、いつも全力で戦わなくてもいいんですよね。
自分を知り、相手を知り、状況を知る。
そのうえで、「これはやる」「これはやらない」と決める。
それだけでも、毎日は少しラクになるのではないでしょうか。
昔の兵法書に書かれた言葉ですが、今の私たちにも十分使える知恵だと思います。
それでは、また次回👋