068【礼を知らざれば立つことなし】(れいをしらざれば たつことなし)

「礼儀を知らなければ、人としての土台が築けない」

「礼儀正しい人」と聞くと、あなたはどんな人を思い浮かべますか?

丁寧な言葉遣い、相手を思いやる態度、公共の場でのマナー…。

実はそれらすべて、古代中国の思想「礼(れい)」に通じています。

孔子はこう言いました。

礼を知らざれば立つことなし

意味は、「礼儀(礼)を知らなければ、人として世の中に立つことはできない」ということ。

つまり、知識や才能よりもまず、「人としての基本=礼儀」がなければ信用されないし、社会の中で生きていけないという厳しくも温かい教えです。

たとえ話

ある会社に、新人が2人入りました。

Aさんは頭の回転が速く、仕事も飲み込みが早いけれど、挨拶をしなかったり、上司への言葉遣いがぞんざい。

Bさんはまだ仕事に不慣れだけれど、笑顔で挨拶し、周囲への気配りも忘れません。

最初はAさんの方が注目されましたが、数ヶ月後、信頼されていたのはBさんの方でした。

周囲が安心して協力したくなるのは、「礼儀がある人」だったのです。

これはまさに、「礼を知らざれば立つことなし」の現代的な例ですね。

出典と意味

この言葉は『論語』の季氏篇りしへんに登場します。

子曰く、礼を知らざれば以て立つことなし。

ここで孔子は、国や組織を治める者に向けて「礼を知らなければ、人として立つことも、国を治めることもできない」と説いています。

この「礼(れい)」は、単なる作法や形式ではありません。

相手を敬う心、秩序を守る意識、社会で共に生きるための知恵としての礼なのです。

現代に活かすヒント

現代社会でも、「礼儀正しい人」は信頼されやすく、チャンスが巡ってきます。

  • 丁寧なメールやLINEの返信
  • 目上の人への敬語
  • お店で「ありがとう」と言うひとこと

こうした小さな行動の積み重ねが、「この人は信頼できる」と思ってもらえる土台になります。

反対に、どれだけ能力があっても、無礼な態度ひとつで信用を失うことも…。

おわりに

「礼儀正しい」というと、形式ばったものに思えるかもしれません。

でも孔子が伝えた「礼」とは、相手への敬意をもって自分を律する心の姿勢なのです。

礼を知らざれば立つことなし。

それはつまり、

「人としての根っこを大切にしてこそ、本当の意味で“立つ”ことができる」

という人生の土台を教えてくれる言葉です。