027【人能く我を弘むるに非ず、我が能く人を弘むるなり】(ひとよくわれをひろむるにあらず、わがよくひとをひろむるなり)

私たちはよく、

「誰かが認めてくれたら…」

「もっとチャンスを与えてくれたら…」

と思いがちです。

でも、論語にはそんな他力本願な考えを見直させてくれる言葉があります。

それが今回ご紹介する一節——

人能ひとよわれひろむるにあらず、ひとひろむるなり」です。

現代語訳とポイント

この言葉をわかりやすく言い換えると、

「自分の力を伸ばしてくれるのは他人じゃない。むしろ、自分が他人を育ててこそ、自分も成長できるんだ」

という意味になります。

自分を高めてくれるのを待つのではなく、自分が人に何を与えられるか——

その視点が、自分自身を育てることにつながるんですね。

たとえ話

ある日、パン職人を目指す青年・ユウタが老舗ベーカリーで働き始めました。

彼は「店長がもっと指導してくれたら、自分も一流になれるはず」と思っていました。

しかし、なかなかチャンスをもらえず、不満が募る日々。

そんなある日、後輩が入ってきて、ユウタが教える立場になります。

教えるためにレシピを復習し、パン作りの工程を丁寧に見直しながら、伝えようとするうちに、ユウタ自身の腕も格段に上達していきました。

後輩を育てようと努力したことで、彼自身の技術も磨かれ、ようやく店長に認められ、念願の新商品開発に参加できるようになったのです。

ユウタが成長できたのは、誰かが彼を引き上げてくれたからではなく、自分が誰かを育てようとしたからだったのです。

出典と背景

この言葉は『論語』の中の「衛霊公えいれいこう」篇に出てきます。

孔子が「他人の助けを待つのではなく、自分が周りにどう貢献するかを考えよ」と説いた場面です。

当時の中国でも、出世や成功は誰かに引き立てられることで成り立つと考える人が多かった中で、孔子は「真の成長は他者への貢献から生まれる」と教えました。

まとめ

この言葉は、今の私たちにも大切なヒントを与えてくれます。

「誰かに頼ってばかりではダメ。自分から人のために動けば、それが自分の力になる。」

人を支えることが、最終的に自分を支えることになる。

だからこそ、「どうしたら自分が周りを高められるか?」という視点を大切にしていきたいですね。