「優しさの中にいて、それを選ばない」――その姿勢がすべてを語る
たとえば、友達が困っているとき、
あなたの手元には助けられるだけの時間もお金もある。
でも、見て見ぬふりをする。
「まあ、他の誰かが助けるだろう」
「忙しいし、自分には関係ない」
――そんなふうに「やれるのにやらない」こと、ありませんか?
今回の論語の言葉は、そんな“選ばなかった姿勢”に対して、
孔子が強く問いを投げかける言葉です。
論語の一節:「仁に居て仁を好まず、知と為すこと無きなり」
子曰、「仁に居て仁を好まず、知と為すこと無きなり。」
(し のたまわく、「じんに いて じんを このまず、ちと なすこと なきなり」)
意味は、
「仁(人への思いやり・やさしさ)の中にいながら、それを好まない者は、賢いとは言えない」
ということ。
つまり、思いやりのある選択肢が目の前にあるのに、それを選ばない人は賢明とはいえないというのです。
たとえ話:2人の部長の話
ある会社で、2人の部長がいました。
A部長は、部下の働きやすさを考え、柔軟な働き方や相談のしやすい雰囲気を常に意識していました。
一方B部長も、「やろうと思えばできる」環境は持っていましたが、あえてそうしませんでした。
「そういうのは管理職の仕事じゃない」と、あくまで数字とルール重視の姿勢。
部下たちは次第にA部長を信頼し、チームも一体感を持って成長。
B部長のチームは、どこか冷めた空気で、離職者が絶えませんでした。
B部長には“仁”を実践するチャンスがあったのに、
それを好まなかった=選ばなかったのです。
孔子ならきっとこう言ったでしょう。
「それでは知者とは言えない」と。
背景と教訓:「実行しない知識に意味はない」
孔子が最も重んじた徳目のひとつが「仁(じん)」です。
これはただの優しさや甘さではなく、他者への真心・思いやりに根ざした行動です。
この言葉では、
「せっかく“仁”の価値がわかる状況にいるのに、それを活かさないのは知恵がない証拠だ」
という、知識より実践を重視する孔子の姿勢が表れています。
まとめ:やさしさを「知っている」だけでは足りない
・優しさのある選択肢を知っていても、実行しなければ意味がない
・チャンスが目の前にあるのに、それを活かさないのは「知者」ではない
・「仁」を好み、選び取ることが、真の賢さに通じる
小さな選択にこそ、その人の“価値観”が表れます。
「助けられるのに助けない」
「理解してるのに動かない」
――そんなとき、自分は“仁を好んでいるか”をふと考えてみてください。
それが、「知者への第一歩」になるかもしれません。