リーダーとは、どうあるべきか。
上に立つ人が声を荒げて命令を下すだけでは、人の心はついてきません。
もし、そこに「思いやり」があったなら――人は自ら進んでその人に従うようになるかもしれません。
今回は、孔子が説いた理想のリーダー像についての言葉を紹介します。
それはまるで、夜空に輝く「北極星」のような存在だと、孔子は言います。
■ 論語の一節
「恵を以て政を為すは、譬えば北辰の其の所に居りて、衆星のこれに共うが如し」
(為政篇より)
■ 意味をやさしく言うと…
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恵(めぐみ)を以て:人への思いやり・優しさをもって
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政(まつりごと)を為す:政治を行う、治める
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北辰(ほくしん):北極星のこと。天の中心にある不動の星。
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共う(したがう):星々が自然と従うように寄っていくこと
つまり、人に思いやりをもって政治を行えば、まるで北極星がじっとその場所にいて、他の星が自然とそれに従っていくように、人々も自然とそのリーダーに従うようになるということです。
■ たとえ話でイメージしてみよう
ある町に、二人のリーダーがいました。
ひとりは「ルールを守れ!罰を与えるぞ!」と厳しく命令を出す人。
もうひとりは、「困っていることがあれば教えて。みんなで解決しよう」と声をかける人。
前者のリーダーには、最初こそ人が従いましたが、徐々に反発が増えました。
一方、後者のリーダーには、誰も命令されていないのに、人々が自然と集まり、力を貸すようになっていきました。
これはまさに、「北辰(北極星)」のように、動かずとも周囲を惹きつける存在です。
人の心に寄り添うことで、リーダーは命令ではなく信頼で人を動かすのです。
■ 出典と背景
この言葉は『論語』の中でも冒頭近くにある「為政(いせい)篇」に登場します。
孔子が「仁(思いやり)」をもって政治を行うことの重要性を説く場面です。
古代中国では、天体の動きは国家運営や秩序の象徴とされていました。
その中でも「北辰(北極星)」は、どの季節でも位置が変わらない“不動の星”として、王の理想像=揺るがず、静かにすべてを見守る存在と重ねられていました。
孔子は、「力で支配するのではなく、徳と恵みによって自然と人を従わせる」のが本当のリーダーであると説いたのです。
■ 現代にどう生かせる?
この教えは、政治だけでなく、家庭、職場、学校、あらゆる「人の上に立つ立場」の人に通じます。
思いやりをもって接し、自らの姿勢を正すことで、周囲は自然とついてくる。
「言葉で支配するより、態度で信頼を得る」
それが、本当に強く、長く人を導く力になるのです。
■ まとめ
北極星のように、じっとそこにあるだけで、星々が自然とその周囲に集まってくる。
孔子が語ったリーダー像は、時代を越えて、今も変わらず私たちの道しるべになっています。
あなたは誰かの「北辰」となれているでしょうか?