062【小人は怨を懐く】(しょうじんはうらみをいだく)

「いつまでも根に持つ人」と「水に流せる人」の違いとは?

人間関係でちょっとしたトラブルがあったとき、すぐに気持ちを切り替えられる人もいれば、いつまでもそのことを引きずってしまう人もいますよね。

「あのとき、あんなこと言われた…」

「まだ許せない…」

そんな風に、ずっと“怨み”のような感情を抱えてしまうと、自分自身がどんどん疲れてしまうものです。

今回ご紹介するのは、そんな人間の弱さに対して、孔子が放った一言。

小人しょうじんうらみいだく」

シンプルだけど、心にグサッとくる深い言葉です。

たとえ話

たとえば、あなたが友達にちょっとした冗談を言ったとします。

それが相手には傷つく言葉だったらしく、謝ってもずっと無視されてしまう…。

「もういいって言ってくれたけど、まだ怒ってる…?」

「そろそろ水に流してくれても…」

そんなとき、感じるのが“気まずさ”や“しんどさ”ですよね。

孔子が言う「小人」は、まさにそういう“いつまでも根に持つ人”のことを指しています。

言葉の意味

この言葉は『論語』の憲問篇けんもんへんに登場します。

君子くんししてどうぜず、小人しょうじんおなじてせず。君子くんしは義にさとり、小人しょうじんさとる。君子くんしうらみいだかず、小人しょうじんうらみいだく。

つまり:

  • 君子(くんし)…品格のある人、思慮深い人は、怨みを心にとどめない
  • 小人(しょうじん)…器の小さい人、自分のことばかり考える人は、怨みを抱き続ける

「小人」は身長が低いという意味ではなく、心が狭く、利己的で感情に流されやすい人という意味で使われています。

現代へのメッセージ

この言葉は、「君子になれ!」というよりも、「怨みを持ち続けるのは、自分のためにならないよ」という孔子の忠告として受け取るのが良いでしょう。

  • 小さなことを気にしすぎて関係が悪くなる
  • 怒りや嫉妬で自分の心が苦しくなる
  • いつまでも過去のことに囚われて前に進めない

そんな状態から抜け出すには、「もういいか」と自分で線を引く勇気が必要です。

おわりに

怒りや悔しさ、傷ついた心を抱えながらも、それを手放す。

それは、簡単なようでとても難しいことです。

でも、それができる人こそが「君子」に近づくのだと、孔子は教えてくれています。

人とのすれ違いがあったとき、「ああ、今の自分、小人になってないかな?」とふと立ち止まってみるのも、自分を成長させるきっかけになるかもしれません。