063【士にして志無くんば、亦何を以てか立たん】(しにしてこころざしなくんば、またなにをもってたたん)

「何者かになりたい」気持ちはある?——孔子が語った“志”の力

「やりたいことがわからない…」
「目標とか夢とか言われてもピンとこない…」

現代を生きる私たちの多くが、一度は感じたことのあるこのモヤモヤ。
でも、そんな悩みを2500年前の孔子も見抜いていたかのような一言があります。

士にして志無くんば、亦何を以てか立たん
(しにしてこころざしなくんば、またなにをもってたたん)

これは、「志を持たない人が、どうやって立つ(生きる)ことができるのか?」という孔子の問いかけです。


たとえ話で見る:「目的地のない旅人」はどこへ向かう?

たとえば、地図も持たず、目的地も決めずにふらふらと旅に出たとしましょう。

最初は自由気ままで楽しいかもしれませんが、次第にこんな不安が湧いてきます。

  • 自分はどこに向かってるの?

  • 今、進んでる道は正しいの?

  • ゴールがないなら、歩き続ける意味ってあるの?

人生も同じで、「志(こころざし)」という目指す方向がなければ、日々の選択にも迷いが生まれ、進む力も弱くなってしまいます。

孔子は、特に「士(し)」——つまり志を持って社会に貢献する立場の人にとって、“志”こそが立つための支えになると説いています。


言葉の意味と出典:「士」と「志」が持つ重み

この言葉は『論語』の「為政(いせい)」篇に登場します。

士にして志無くんば、亦何を以てか立たん。

ここでの「士(し)」は、学び続け、人格を高めようとする知識人・修養者のことを指します。ただの地位や職業を表す言葉ではありません。

  • =学び、理想を追い求める人

  • =人生の指針や目標、理想像

つまり孔子は、「理想を持って生きようとする人間が、その根っこである“志”を持たなかったら、どうやって自分を支えるのか?」と問いかけているのです。


現代へのヒント:「でっかい夢」じゃなくていい、小さな志から始めよう

「志」と聞くと、「起業する!」「世界を変える!」といった大きな夢を想像しがちですが、そうである必要はありません。

  • 人にやさしくしたい

  • 毎日をちょっとずつよくしたい

  • 自分らしく生きていきたい

そんな小さな志でさえ、自分の生き方に芯を与えてくれます。

志は、自分を導く“内なるコンパス”のようなもの。方向が見えるだけで、不思議と足取りも軽くなるんです。


おわりに:あなたの「志」は何ですか?

今はまだはっきりとした志がなくても大丈夫。
でも、「自分はどう生きたいか?」を時々自分に問いかけてみることが大切です。

孔子の言葉は、「志を持つこと」は立派な人間であるための条件ではなく、誰にとっても必要な“人生の土台”だよと、優しく教えてくれているように思えます。