075【能く礼を用うるは、争うこと無し】 (よくれいをもちうるは、あらそうことなし)

人と人が集まるところには、どうしても「意見の違い」や「気持ちのすれ違い」が生まれます。

だからこそ、「どうやって争いを防ぐか?」は、昔からずっと大きな課題でした。

現代では、マナー・常識・ルールなどがその役割を果たしていますが、

それに通じる考え方を、なんと2500年前に孔子がすでに説いていたのです。

論語の一節

れいもちうるは、あらそうことし」八佾篇はちいつへんより)

意味をやさしく言うと…

  • 能く(よく):うまく、しっかりと
  • 礼(れい)を用うる(もちうる):礼儀や作法、けじめをわきまえること
  • 争うこと無し:もめごとや争いが起きない

つまり、「礼儀をきちんと守ることができれば、人と争うことは起こらない」という教えです。

たとえ話

ある日、スーパーのレジでふたりの人が同時に並びました。

どちらが先かは微妙なタイミング。

空気がピリピリしてきたそのとき…

一方が「お先にどうぞ」と一言。

もう一方も「ありがとうございます」とにっこり。

その瞬間、空気はふわっとやわらかくなりました。

たった一言の“礼”が、争いを避け、互いの気分までよくしてくれたのです。

出典と背景

この言葉は『論語』の「八佾篇」に登場します。

この篇では、礼(れい)=社会の秩序や人間関係のバランスを保つ大切な要素として、孔子が繰り返し語っています。

古代中国では、礼は単なる「作法」ではなく、社会の平和を保つための“仕組み”でした。

挨拶や席順、言葉遣いなど、細かく定めることで、人々の行動を自然と調和させていたのです。

孔子は、「礼がしっかりしていれば、無駄な争いは起こらない」と考えていました。

現代にどう生かせる?

  • 職場でのちょっとした言い方
  • 満員電車でのちょっとした配慮
  • SNSでのコメントのトーン

こうした日常の“ちょっとしたこと”の積み重ねが、実は人間関係の争いを防いでくれます。

「自分さえよければ」ではなく、

「お互いが気持ちよく過ごせるように」少しだけ気を配る。

それが「礼」を用いる、ということなのです。

まとめ

礼をもって人に接すれば、争いは自然と遠ざかる。
それは、正しさではなく、“思いやり”の積み重ね。

争いを止めたいなら、まずは自分の言葉やふるまいを見直してみる。

孔子のこの一言は、現代にも十分通じる“人づきあいの極意”と言えるでしょう。