059【義を好む者は、其の言必ず信】(ぎをこのむものは、そのことば かならずしん)

〜正義を重んじる人は、口にすることにも誠実である〜

「この人の言うことなら信じられる」

そんなふうに思える人、あなたの周りにいますか?

今回は、“正義を大切にする人ほど、言葉に責任を持つ”という、孔子の一節をご紹介します。

出典と意味

この言葉は『論語』の衛霊公篇えいれいこうへんに登場します。

このものは、言必ことばかならしん

現代語訳すると、

正しいこと(義)を好む人は、言葉にも誠実である。

つまり、

「正義感のある人」は、言うことにも責任を持ち、嘘やごまかしをしないという意味です。

ここでの「義(ぎ)」は、“人として正しいこと”、“道理にかなった行い”のこと。

「信(しん)」は、“誠実で信頼できること”を意味します。

たとえ話

ある木工所の親方は、昔から「仕事は誠実に、約束は守る」が信条。

納期も品質も決してごまかさず、「無理です」とも正直に伝えるタイプ。

一方、別の職人は口ではうまく取り繕うが、納期を守らず品質もバラバラ。

お客さんたちは自然と、前者の親方を選び続けました。

「あの人が言うなら間違いない」

――信頼は、誠実な言葉の積み重ねから生まれるのです。

言葉の背景

孔子は「仁」「義」「礼」「智」「信」という五つの徳を重視しましたが、この中でも「義」と「信」は、人と人との関係を支える根本とされていました。

つまり、「正しいことを貫く人は、自然と信頼される言葉を話すようになる」という教え。

逆に言えば、どんなに言葉巧みに語っても、行いがズレていれば信頼されないということです。

現代への応用

この教えは、現代の仕事や人間関係にも深く通じています。

  • 「義」を持って行動する → 「この人の話は信用できる」と評価される
  • ごまかしや口先だけ → 一度でも信頼を失えば取り戻すのは難しい

たとえば、上司・部下の関係でも、

「部下の意見をきちんと聞く」「言ったことを守る」上司のもとには、自然と信頼が集まります。

まとめ

【義を好む者は、其の言必ず信】は、

“正しいことを大切にする人は、言葉にも誠実さがにじみ出る”という、孔子の教えです。

人を信じるのが難しい時代だからこそ、

自分自身が「信じてもらえる人間であるか」を、まず見つめ直してみたいですね。

正義感は、態度や言葉に現れます。

「義をもって生きる人」こそ、誰からも信頼される人になれるのです。