何気なく言ったひと言が、あとでとんでもないトラブルに発展してしまった……そんな経験、ありませんか?
「本当は黙っていればよかったのに」と思うことが、人生ではよくあるものです。
今回は、そんな“口は災いの元”を象徴する、昔から語り継がれていることわざをご紹介します。
◆ ことわざ:「雉も鳴かずば撃たれまい(きじも なかずば うたれまい)」
意味:
「余計なことを言ったり、目立つような行動をしなければ災いを招かずに済む」という教え。特に、口を滑らせたことが原因で不利な立場になった時などによく使われます。
◆ たとえ話:部活のミス、誰が言った?
ある中学校のバスケットボール部で、練習用のボールが1個なくなりました。先生は怒り、「誰が最後にボールを使っていたのか、正直に言いなさい」と言いました。
みんな沈黙。
すると、Aくんがポツリと、「昨日、僕が持って帰ったかも……」と口にしました。
それを聞いたBくんがすかさず、「あっ、それなら僕も以前、家に持って帰ったことがあったかも」と続けました。
その瞬間、先生はBくんを名指しで叱責。「そんなことをしていたのか! 以前のことでも問題だぞ!」
実は、今回のボール紛失とは関係のない話だったのですが、Bくんの不用意な一言が、新たな問題として取り上げられてしまったのです。
まさに──
雉も鳴かずば撃たれまい。
◆ 解説:なぜ「雉(きじ)」なの?
雉(キジ)は、日本に昔から生息する鳥で、オスは特に大きな鳴き声をあげることで知られています。
ハンターが狩りをする際、物音や鳴き声を頼りに雉の居場所を突き止め、銃で撃ちます。
つまり、「鳴かなければ居場所がバレず、撃たれずにすんだのに……」というたとえから生まれた言葉です。
人間でも同じように、「言わなくてもいいこと」をわざわざ言ってしまい、自分の立場を悪くしてしまうことがあります。
◆ 起源・由来について
このことわざの起源は、日本の猟師文化にあります。
昔から、山での狩猟では雉や鹿などの動物の動きや鳴き声が重要な手がかりとされてきました。
ことわざとしては江戸時代の文献にも登場しており、「不用意な言動が災難のもとになる」という意味で使われてきました。
類義語には「口は災いの元」「沈黙は金、雄弁は銀」などがあります。
◆ 現代でどう活かす?
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SNSでの発言
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職場でのちょっとした一言
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会話の流れでポロっと出てしまう過去の失敗談
現代社会では「発言が記録される」場面も多く、昔以上に言葉の重みが増しています。
もちろん、正直さや誠実さは大切ですが、「今それを言うべきか?」と一呼吸おくことは、余計なトラブルを防ぐ大事な判断力です。
◆ まとめ
🔇 「雉も鳴かずば撃たれまい」——余計な言葉が、自分を傷つけることもある。
「沈黙は逃げ」ではなく、「沈黙は守り」です。
賢い人は、自分の言葉の“出しどころ”を心得ています。私たちもまた、「言う前に、飲み込む」ことの価値を忘れずにいたいものです。