051【君子は九思あり】(くんしは きゅうし あり)

〜賢い人が大切にしている9つの心がけ〜

「賢い人って、どんなふうに物ごとを考えているんだろう?」

そんな疑問に、孔子はズバリ答えてくれています。

中国の古典『論語』の中には、”君子”(教養や徳のある人)がどんなことを大切にしているかがたくさん記されています。

今回はその中でもとくに有名な言葉「君子くんし九思きゅうしあり」をご紹介します。

ちょっと堅そうに聞こえるかもしれませんが、たとえ話を交えて、日常生活でも使えるようにわかりやすく解説していきますね!

出典と意味

この言葉は『論語』の季氏篇きしへんに登場します。

君子有九思(くんしは きゅうし あり)
君子、九つのことについて深く思いめぐらすべし——という意味です。

以下がその具体的な九つの「思い」です。

【君子が大切にする9つの思い】

  1. 視るに明らかなるを思う
     → 物事をよく見て、ハッキリと正しく判断することを心がける。
  2. 聴くにさときを思う
     → 話を注意深く聞き、早合点しないようにする。
  3. 色におんを思う
     → 表情は穏やかに、相手に安心感を与えるようにする。
  4. かたちうやうやしきを思う
     → 身なりや姿勢に礼儀を忘れない。
  5. げんちゅうを思う
     → 嘘をつかず、誠実な言葉を選ぶ。
  6. ことけいを思う
     → どんな小さなことにも真剣に取り組む。
  7. うたがうにうを思う
     → わからないことは素直に質問する。
  8. 忿いかりにかたきを思う
     → 怒るときは慎重に。感情に流されない。
  9. るを見てを思う
     → 利益を目の前にしても、正しい道を選ぶ。

たとえ話

たとえば、ある会社の部長さんを想像してみてください。

彼は部下の報告をただ聞き流さず、ちゃんと目を見て話を聞く(聴に聡を思う)。

急なトラブルが起きても、冷静に状況を見て(視に明を思う)、部下を責めるよりも原因を一緒に考えてくれる。

表情は穏やかで(色に温を思う)、言葉は誠実、でも厳しさも忘れない。

こんな上司、信頼できますよね。

背景や起源

この「九思きゅうし」の教えは、戦乱の世の中で、人々がどう生きるべきかを示すヒントとして語られました。

当時は、力や富を優先する風潮がありましたが、孔子はそれに異を唱え、「内面の徳」を大切にする道を説いたのです。

つまり、君子とは単に地位が高い人のことではなく、「どう考え、どう生きるか」が問われていたんですね。

現代に活かすには?

この「九思」は、現代のビジネスにも、人間関係にもそのまま使える考え方ばかりです。

  • 会議中、人の話を最後まで聞く(聴に聡)
  • 顔色に出ないように穏やかにふるまう(色に温)
  • ミスを叱るときは冷静に話す(忿に難)
  • 怪しい情報は、きちんと質問して確かめる(疑に問)

など、どれも身近な行動に置き換えられます。

まとめ

【君子は九思あり】は、「立派な人は、こういうふうに心を使っているんだよ」という、
古代からの“思考のチェックリスト”のようなもの。

人生を丁寧に、誠実に生きるヒントが詰まったこの言葉、ぜひあなたの毎日に取り入れてみてください。