032【一寸の虫にも五分の魂】小さくても、心はある。

日々の生活で、ちょっと見下されたような言葉にイラッとした経験、ありませんか?

「まだ新人なんだから口を出すな」

「そんな小さな会社に何ができるの?」

「子どもに何がわかるの?」

でも、思い出してください。

小さく見えても、誰の中にも“プライド”や“信念”はちゃんとある。

今日は、そんな“見た目や立場で人を判断してはいけない”という大切な教えを含んだ、古くからのことわざをご紹介します。

ことわざ

一寸いっすんむしにも五分ごぶたましい

意味:
たとえ体が小さく弱そうに見えても、それなりの意地や心、誇りがある。

どんなに弱そうな者にも、自分を守る気持ちや反発心があるという教えです。

たとえ話

ある会社で、ベテラン社員が新人の田中くんに向かって、「君は黙って言われたことだけしてればいいんだよ」と一言。

しかし田中くん、静かにこう返しました。

「僕なりに考えて動いたつもりです。間違っていたら教えていただきたいですが、考えることをやめるのはやめたいんです。」

その瞬間、周囲の空気が変わりました。

先輩社員も思わず「…悪かった」と一言。

その後、田中くんの意見が業務改善に活かされることになったのです。

まさにこれが…

「一寸の虫にも五分の魂」!


解説

「一寸(いっすん)」は、昔の長さの単位でおよそ3cm。

つまり「とても小さな虫」にも「五分(ごぶ)」=半分の魂がある、という意味。

小さい存在でも、完全に無力ではない。

たとえ相手が動物や子どもであっても、侮ってはいけないという戒めです。

これは「弱者には弱者なりの思いや反発心がある」という、人間理解のことわざでもあります。

起源・由来

このことわざは江戸時代から伝わることばで、当時の文学や講談でも多く使われてきました。

江戸の町人文化では「立場が弱くても誇りを持って生きる」ことが美徳とされており、庶民の間でも広く親しまれていた表現です。

また、“小さな存在にも尊厳がある”という考え方は、仏教の「万物に仏性あり」という思想とも重なります。

現代での活かし方

現代社会では、以下のような場面でこのことわざが心に響きます。

  • 立場の弱い人(新人・子ども・高齢者)を見下さない
  • マイナーな意見にも耳を傾ける
  • SNSなどで発信力の弱い人の声を大切にする
  • 動物や自然に対する思いやりの心

また、自分が“軽んじられている”と感じたときも、この言葉を思い出すと背筋が伸びます。

「私にも、私の魂がある。」

まとめ

🐛 「一寸の虫にも五分の魂」──小さくても、心がある。誇りがある。

このことわざは、見下す人への戒めであり、見下された人への励ましでもあります。

誰かを軽く扱いそうになったとき、また、自分の存在価値に自信がなくなったとき、この言葉を思い出してみてください。

あなたの中にも、ちゃんと魂がある。

小さな虫だって、つぶされそうになれば、必死に動くんです。