096【君子は敬して失わず、与えて奪わず、これを行えば遠きも必ず至る】 (くんしはけいしてうしなわず、あたえてうばわず、これをおこなえばとおきもかならずいたる)

「一貫した人」は、静かに信頼されていく

人付き合いの中で、「あの人、信用できるな」と感じる相手ってどんな人でしょうか?

・いつも礼儀正しい
・一度した約束を反故にしない
・見返りを求めず、人に与えることができる

そんな人は、特別なことをしているわけじゃなくても、自然とまわりに人が集まり、
どんなに時間がかかっても、しっかりと目標にたどり着いているように見えます。

それはまさに、孔子の語った「君子のあり方」そのもの。

今回は、そんな人物像を示した論語の一節、
「君子は敬して失わず、与えて奪わず、これを行えば遠きも必ず至る」
をご紹介します。


たとえ話:静かに信用を築いた職人

ある町に、毎朝店の前を掃き清めてから開店する、古びた修理屋の職人がいました。

彼はお客さんに対して丁寧に接し、料金も明朗で、「直せないものは直せない」と正直に言います。
ときには無料でちょっとした手直しをしてあげることもありました。

はじめは誰も気に留めませんでしたが、数年経つと、口コミでお客さんが集まり、
いつの間にか町で一番信頼される店になっていました。

彼のやっていたのは、「礼を失わず、人に与えたことを後で取り返そうとしない」という、
まさに君子の生き方でした。


言葉の意味と出典

この言葉は、『論語』の「衛霊公(えいれいこう)」篇に登場します。

子曰、君子敬而無失、与人恵而不求報、遠而復至、民之帰也、猶水之就下也。

※現代語訳の一例:
「君子は人を敬ってその礼を失わず、人に施してその見返りを求めず、これを続けていけば、どんなに遠くても必ず目的にたどり着ける」

この言葉に込められているのは、
一貫した誠実さが、最終的に人の心をつかみ、結果を生むという思想です。

「敬して失わず」=人への敬意を持ち続けること
「与えて奪わず」=施しをしても見返りを求めないこと
「これを行えば遠きも必ず至る」=それを継続すれば、困難に見えても必ず成果にたどり着く

孔子は、人の信頼や成果は、積み重ねの中でゆっくりと育っていくものだと説いているのです。


まとめ:信頼と成果は“静かに、確実に”積み上がる

現代は、即時的な成果や反応が求められる時代。
でも、人生や仕事において、本当に大切なものは、
**「コツコツ続けた誠実さ」**の先にやってきます。

・人に敬意を忘れない
・与えても見返りを求めない
・遠くても、目指す場所に向かい続ける

そんな「君子の道」を、自分なりに歩んでいけたら、
あなたの周りにも、静かな信頼と成果が積み重なっていくはずです。