077【人にして信無くんば、其の可なるを知らず】 (ひとにして しんなくんば、その かなるを しらず)

どれだけスキルがあっても、どれだけ見た目が立派でも――
「この人、なんか信用できないな…」と思われたら、関係は長く続きません。

逆に、ちょっと不器用でも「この人は信頼できる」と感じた相手とは、安心して一緒にやっていけるものです。

信用は、目に見えないけれど、とても大切な“土台”。
そんな信頼の重要性を、孔子はシンプルで力強い言葉で語っています。


■ 論語の一節

「人にして信無くんば、其の可なるを知らず」
(為政〈いせい〉篇より)


■ 意味をやさしく言うと…

  • 人にして信無くんば:人として信用がなければ

  • 其の可なるを知らず:その人の本当の価値(よさ)も分からない

つまりこの言葉は、
「人として信頼されないのであれば、その人の価値を評価することはできない」
という意味です。


■ たとえ話でイメージしてみよう

あなたがリーダーだとして、2人の部下がいたとします。

  • Aさん:ものすごく仕事ができるけど、納期をごまかしたり、報告を怠ったりする

  • Bさん:少し仕事は遅いけれど、約束は守るし、相談や報連相をきちんとする

長く一緒に働いていきたいと思うのは、きっとBさんではないでしょうか?

どんなに能力があっても、「信用できない人」では不安がつきまといます。
それほど、**“信”は人間関係の根本”**なんです。


■ 出典と背景

この言葉は『論語』の「為政篇」に登場します。
孔子は、国家の運営にも個人の生き方にも「信頼」が最も重要であると繰り返し説いています。

この「信」とは、単なる誠実さだけではなく、**“言ったことを守る”“一貫性がある”**といった、行動全体を含んだものです。

孔子にとって、「信」がなければ、人はどれだけ知識があっても、どれだけ力を持っていても、信用できる存在にはなれないのです。


■ 現代にどう生かせる?

  • 小さな約束を守る

  • 嘘をつかない

  • ミスを隠さず報告する

  • 「やります」と言ったことはやり切る

こうした“信”の積み重ねが、信頼を築く土台になります。

信用を得るには時間がかかるけれど、失うのは一瞬。
だからこそ、日々の行動がとても大切なんですね。


■ まとめ

信頼されない人は、たとえどれだけ能力があっても、認められない。
信頼される人は、それだけで価値がある。

「信用される自分でいること」――
それが、すべての人間関係のスタート地点なのだと、孔子は教えてくれます。