「この人は営業だけの人」「あの人は経理しかできない」
――そんな“枠”に人を当てはめてしまうこと、ありませんか?
でも、実際にはいろんな場面で力を発揮できる“柔軟な人”こそが、組織や社会を支えているものです。
そんな考え方を、2500年前の孔子はたった一言で表しました。
それがこの「君子は器に拘らず」という言葉です。
■ 論語の一節
「君子は器に拘らず」
(為政〈いせい〉篇より)
■ 意味をやさしく言うと…
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君子(くんし):人格的に優れた立派な人
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器(うつわ):ここでは「道具」や「専門的な役割」=一つの特定分野に限定された人
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拘らず(こだわらず):固定されない、限定しない
つまりこの言葉は、
「立派な人(=君子)は、特定の役割や専門だけにとどまらず、柔軟に物事をこなせる」
という意味です。
■ たとえ話でイメージしてみよう
ある会社に、経理出身の部長がいました。
でも彼は、数字だけでなく、現場の営業にも顔を出し、後輩の悩みにも耳を傾けます。
商品開発のアイデアにも関心をもち、プレゼンにも自ら登壇。
周りからは「経理だけの人だと思ってたのに…!」と驚かれます。
でも彼は笑ってこう言います。
「どの仕事も“人”がやってるんだ。だから枠にこだわるより、できることをやるよ」
彼こそまさに「器に拘らない君子」です。
■ 出典と背景
この言葉は『論語』の「為政篇」に登場します。
孔子が目指した「君子」とは、単に知識や技術に優れた人ではなく、広い視野を持ち、柔軟に物事に対応できる人。
一方、「器」とは“ある一つの用途に特化した道具”のこと。
つまり「器に拘る」とは、「特定のスキルしか使えない人」を意味します。
孔子は、人の価値は“専門性”に縛られるものではなく、人格や柔軟さ、全体を見る力にこそあると説いたのです。
■ 現代にどう生かせる?
今の時代、「専門性」や「スキル」が重視されがちです。
でも、その一方で、柔軟に分野を横断して動ける人、多様な視点を持つ人が求められています。
たとえば…
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エンジニアだけどプレゼンもうまい
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営業だけどマーケティングにも詳しい
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管理職だけど、現場感覚もある
こうした人こそ、「器に拘らない君子」なんです。
■ まとめ
人は、ただの“道具”じゃない。
枠を超えてこそ、本当の可能性がひらける。
あなたは「○○な人」と決めつけられていませんか?
自分の枠を決めつけていませんか?
「器に拘らず」の教えは、
現代の働き方・生き方に大きなヒントを与えてくれます。