上手な言葉にご用心?見せかけの優しさと本物の人徳の違い
私たちは日々、いろんな言葉を耳にします。
「その服、似合ってるね!」「すごいですね、尊敬します!」
こうした褒め言葉や気の利いたセリフを言える人は、どこか好感が持てますよね。
でも、孔子はそんな「言葉の巧みさ」に少しだけ、注意を促しているんです。
巧言は徳に似たり
(こうげん は とく に にたり)
意味は、「口がうまい人は、一見“徳があるよう”に見えるが、実際にはそうとは限らない」ということ。
つまり、言葉の上手さと人としての本質(徳)は、似て非なるものだと孔子は教えているのです。
たとえ話で見る:「言葉が上手な営業マン」と「誠実な職人」
ある日、家をリフォームしようと考えたAさんは、2人の職人と出会いました。
ひとりは、明るくて話し上手。おだてたり褒めたりがうまく、「全部おまかせください!」と力強く請け負います。
もうひとりは、口数は少ないけれど、丁寧に現地を見て「ここは少し時間がかかるかもしれません」と正直に説明してくれました。
結果、Aさんが信頼したのは、後者の“誠実な職人”でした。
口先だけの安心感よりも、誠実な対応や行動の積み重ねこそが信頼につながると気づいたのです。
まさに「巧言は徳に似たり」の現代的な実例です。
出典と意味の背景:『論語』の「学而(がくじ)」篇より
この言葉は『論語』の最初の章「学而」篇に出てきます。原文ではこう記されています。
子曰く、巧言令色、鮮なし仁。
(し のたまわく、こうげん れいしょく、すくなし じん)
意訳すると「言葉がうまく、愛想のいい人に限って、真の思いやり(仁)は少ないものだ」となります。
つまり孔子は、「本当に徳のある人は、言葉よりも行動や姿勢にその人らしさが出る」と教えているのです。
現代に活かすヒント:「言葉」より「真心」を伝える人に
私たちは、印象的な言葉や華やかなプレゼンに惹かれがちです。
でも、それが本当の「人徳」や「信頼」につながるとは限りません。
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上手な話より、誠実な説明
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褒め言葉より、思いやりの行動
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愛想笑いより、目を見て話すまなざし
そんな“真の優しさ”こそが、人の心を動かし、信頼を築くカギなのです。
おわりに:似て非なる「言葉の巧さ」と「人の本質」
巧言は徳に似たり。
それは、表面的な言葉の華やかさに惑わされず、本当の人柄や行動を見極めなさいという孔子からの静かなメッセージ。
言葉は便利で、人の心をつかむ武器にもなりますが、
やはり最後に残るのは、言葉の裏にある「まごころ」や「誠実さ」。
だからこそ、私たちもまた、**“巧言”ではなく、“徳ある人”**を目指して生きていきたいものですね。