「正しさ」で心を動かせる人になろう
私たちはつい、相手を動かすために「力」や「権威」、「損得」で物事を判断しがちです。
でも孔子は、人を動かす本当の力は「義(=正しさ)」にあると説いています。
義を以てこれを制す
(ぎをもってこれをせいす)
つまり、「人を導くときには、正しさによってこれを制すべきである」という意味です。
これは今の時代にも通じる、人間関係の根っこにあるべき“心のあり方”を教えてくれる言葉です。
たとえ話で見る:「怖がらせて従わせる」VS「尊敬されてついてくる」
ある学校に、2人の先生がいたとします。
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A先生は、厳しいルールと罰で生徒を黙らせます。みんな怖がって従いますが、心から納得はしていません。
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B先生は、生徒一人ひとりに目を配り、何が正しいかを一緒に考えます。生徒は自然と信頼し、自分から行動するようになります。
一見、A先生のほうが「制している」ように見えますが、孔子が理想とするのはB先生のような人。
つまり、「義=正しさ」によって、相手の心に響かせ、行動を引き出すことが本当の“制す”ということなんです。
出典と意味の背景:『論語』の「顔淵」篇より
この言葉は『論語』の「顔淵(がんえん)」篇に登場します。
是を導くに政を以てし、これを斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずること無し。これを導くに徳を以てし、これを斉うるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格(ただ)し。
ここで孔子は「法律や罰(刑罰)で人を管理すると、人は罰を避けるだけで恥を知らない。徳や礼=正しさや思いやりで導けば、人は自ら正しくあろうとする」と語ります。
つまり、「義=人としての正しさ」をもって人を動かすことが、真の指導であると強調しているのです。
現代へのヒント:「義で制す」はリーダーシップにも効く
この言葉は、学校や家庭だけでなく、職場やチームでも役立ちます。
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上司が「正しいからやろう」と言えば、部下は納得して動く
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リーダーが「みんなにとってこれが誠実なやり方だ」と語れば、仲間は信頼してついてくる
逆に、ルールや強制だけで動かそうとすると、表面的にはうまくいっているようで、長続きしません。
信頼を築く力=“義”の力。
正しさを根拠にすることで、人の心を動かし、行動が生まれます。
おわりに:あなたは「何をもって人を動かしますか?」
もし今、人間関係や組織運営で悩んでいるなら、力や損得ではなく「義(正しさ)」を基準にしてみるのはいかがでしょうか?
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自分が信じられる“正しさ”を言葉にしてみる
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相手の目線に立って、納得できる説明をしてみる
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ルールより“信頼”を大切にしてみる
孔子の教えは、時代を超えて「人の心は、正しさにこそ動かされる」と教えてくれているのです。