064【己の立たんと欲して人を立たしむ】(おのれのたたんとほっして ひとをたたしむ)

「自分が成長したいなら、まず人の成長を助けよう」

誰かに優しくされたとき、心がポッと温かくなったことってありませんか?
逆に、自分の目標ばかり追いかけて周りが見えなくなっている人に、どこか違和感を覚えたこともあるかもしれません。

そんな人間関係のヒントになるのが、孔子のこの言葉:

己の立たんと欲して人を立たしむ

これは、「自分が成功したいと思うなら、まず他人を成功させよう」という意味です。


たとえ話で見る:「教えることで自分も伸びる」

たとえば、あなたが学校で英語を勉強していたとしましょう。
クラスメートが「ここの文法がわからない」と言ってきたとき、自分もまだ完璧じゃないけど、一緒に考えて教えてみる。

すると不思議なことに、自分の理解も深まっていた…という経験、ありませんか?

これはまさに「人を立たせることで、自分も立つ」体験です。
孔子は、この「共に高め合う姿勢」こそが、人間として大切なあり方だと説いています。


言葉の意味と出典:『論語』の中の“利他”の精神

この言葉は『論語』の「雍也(ようや)」篇に登場します。全文ではこう述べられています:

己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。己の立たんと欲して、人を立たしむ。己の達せんと欲して、人を達せしむ。

簡単に言うと、

  • 自分がされて嫌なことは人にしない

  • 自分が成長したいなら、人を成長させる

  • 自分が成功したいなら、人の成功を助ける

という、“他者を思いやる心”=利他の精神が詰まった一節です。


現代へのメッセージ:「ギブの姿勢」が信頼を生む時代

SNSでも職場でも、「自分の実績」「自分の発信」に注目が集まりがちな現代。
でも、信頼を集める人は決まって、「人の役に立とう」とする姿勢を持っているものです。

  • まず相手の話を聞く

  • 後輩に惜しみなく知識をシェアする

  • 仲間の成功を一緒に喜ぶ

そうした“ギブの精神”が、結果として自分の成長や成功につながっていく。

まさに孔子の教えが、今でも変わらず通用する理由です。


おわりに:「人を立たせる」ことが、実は一番の近道

「自分が一番になりたい」「成功したい」と強く思うときほど、あえて周りを見ることは難しいもの。
でも、そんなときこそ立ち止まって、周囲に手を差し伸べてみてください。

  • 人の笑顔が、自分の心も明るくする

  • 人を導く経験が、自分を成長させる

  • 与えることが、めぐりめぐって自分の糧になる

孔子のこの言葉は、「人の幸せを願うことで、自分も幸せになれる」という、古くて新しい人生の真理を教えてくれているのです。