
私たちの日常には、思わずイラッとしてしまう瞬間や、うっかりミスをしてしまうことがありますよね。
でも、その「あと」が大事なのだと教えてくれるのが、今回ご紹介する論語の一節です。
論語には、ただ「こうすべきだ」と説くのではなく、人間らしい弱さを受け止めながら、どう向き合っていくかを教えてくれる言葉がたくさんあります。
その中の一つがこの言葉――
「怒りを遷さず、過ちを弐たびせず」
(いかりをうつさず、あやまちをふたたびせず)
この言葉の意味は?
「怒りを遷さず」とは、怒りをいつまでも引きずらないこと。
「過ちを弐たびせず」とは、同じ間違いを繰り返さないこと。
つまりこの言葉は、「感情に流されず、失敗から学ぶことが大切だ」という、自己成長の秘訣を説いています。
起源と背景
この言葉は、『論語』の中の「子張第十九」に登場します。
子曰く、過ちを改めざる、是を過ちと謂う。
これは、「過ちを改めなければ、それが本当の過ちである」と孔子が弟子たちに語ったもので、そこから派生して「過ちを弐たびせず」という理想が形になっていきました。
また、「怒りを遷さず」は、君子(立派な人物)は怒りを引きずらないという理想像を表しています。
孔子は、「感情に支配されることなく、理性で物事を判断する姿勢」が人としての成長につながると考えていました。
たとえ話
ある町に、パン屋を営むタカシさんがいました。
ある日、見習いのユウタくんが、大事な注文を間違えてしまい、お客さんに迷惑をかけてしまいます。
タカシさんは最初、とても怒りました。
でも一晩寝て、次の日にはこう言います。
「ユウタ、もういいよ。次は同じ間違いをしなければいい。怒ってばかりいてもパンは焼けないからな。」
ユウタくんはその言葉に救われ、同じミスを繰り返さないようノートを取りはじめました。
それから彼はミスを減らし、やがて立派な職人に成長していきます。
このタカシさんの姿勢こそ、「怒りを遷さず、過ちを弐たびせず」の実践例です。
現代にどう活かす?
この言葉は、仕事や人間関係でとても役立ちます。
たとえば、部下や後輩がミスをしたとき、怒るのは自然なこと。
でも、その怒りを翌日まで持ち越さない。
そして、相手が同じミスをしないよう一緒に学ぶ。
そんな姿勢が、信頼や成長を生みます。
また、自分がミスをしたときも、「なんでまた…」と落ち込むのではなく、「次は繰り返さないぞ」と切り替えることが大切です。
怒りを引きずらず、ミスを糧にできる人は、人生をより良い方向へ導けるはずです。
今日のあなたの一日が、そんな「君子」への一歩になりますように。