
こんにちは。
今回は『論語』から、現代の私たちにも深く刺さる言葉をご紹介します。
それがこの言葉――
「君子は義を先にして利を後にす」
です。
一見すると少し堅い言葉に感じますが、意味を知ると「なるほど」と納得できるもの。
ビジネスの場面や人間関係、日常の選択の中でも「どう行動すればいいのか?」というヒントを与えてくれます。
言葉の意味
この言葉は『論語』の「里仁」篇に出てきます。
原文: 君子先義而後利
書き下し文: 君子は義を先にして利を後にす
現代語訳: 立派な人(君子)は、正しいこと(義)をまず優先し、利益(利)はそのあとに考える。
ここでの「君子」とは、単に身分の高い人ではなく、人としての理想像を意味します。
そして「義」は、正しさ・道徳・人としての筋、「利」はお金や得になることを指します。
つまりこの言葉は、
「ちゃんとした人間は、目先の利益よりも正しいことを選ぶ」
という教えなのです。
たとえ話
ある日、学校からの帰り道に、少年タクミくんはコンビニでチョコレートを見つけました。
財布を忘れてお金がない。
でも、誰も見ていない。
手を伸ばせば……手に入ってしまう。
このとき、タクミくんの頭の中には「欲しい(利)」と「悪いことはしない(義)」のふたつの気持ちが浮かびます。
彼が「義」を選び、お店の人に「お金を忘れて買えませんでした」と正直に話せたなら、彼はまさに「君子」です。
もし「バレなければいいや」と盗んでしまえば、その場では得をしたかもしれませんが、大切な信頼や誠実さを失ってしまいます。
このたとえは極端に思えるかもしれませんが、大人になっても「正しさ」と「利益」の間で揺れる場面はたくさんあります。
言葉の背景
この言葉が記された「里仁」篇は、「人としてどうあるべきか」をテーマにした章です。
孔子が生きた春秋時代の中国は、諸侯が力を競い、争いも絶えない混乱の時代でした。
そうした中で、孔子は「人が正しく生きる道」を強く求めました。
「世の中が混乱しているからこそ、人の正しさが大切だ」
「自分だけ得をしようとすれば、社会全体が壊れてしまう」
孔子はそう信じていたからこそ、「義を先に」という教えを重んじたのです。
現代への応用
私たちは日々、小さな選択を積み重ねながら生きています。
ちょっとズルをすれば得する場面、誰かに嘘をつけば楽になる場面。
でも、そうしたときに「義」を思い出せるかどうか。
それが、自分自身への信頼、そして人との信頼関係をつくる礎になります。
まとめ
【君子は義を先にして利を後にす】
正しいことを第一に考え、利益はその後に――。
短い言葉ですが、生き方の芯をつく教えです。
この言葉を知っているだけで、人生の分かれ道で少し立ち止まって「自分はどうありたいか?」を見つめ直せるはずです。