031【君子は義を先にして利を後にす】(くんしはぎをさきにしてりをのちにす)

こんにちは。

今回は『論語』から、現代の私たちにも深く刺さる言葉をご紹介します。

それがこの言葉――

君子くんしさきにしてのちにす」

です。

一見すると少し堅い言葉に感じますが、意味を知ると「なるほど」と納得できるもの。

ビジネスの場面や人間関係、日常の選択の中でも「どう行動すればいいのか?」というヒントを与えてくれます。

言葉の意味

この言葉は『論語』の「里仁りじん」篇に出てきます。

原文: 君子先義而後利
書き下し文: 君子は義を先にして利を後にす
現代語訳: 立派な人(君子)は、正しいこと(義)をまず優先し、利益(利)はそのあとに考える。

ここでの「君子」とは、単に身分の高い人ではなく、人としての理想像を意味します。

そして「義」は、正しさ・道徳・人としての筋、「利」はお金や得になることを指します。

つまりこの言葉は、

「ちゃんとした人間は、目先の利益よりも正しいことを選ぶ」

という教えなのです。

たとえ話

ある日、学校からの帰り道に、少年タクミくんはコンビニでチョコレートを見つけました。

財布を忘れてお金がない。

でも、誰も見ていない。

手を伸ばせば……手に入ってしまう。

このとき、タクミくんの頭の中には「欲しい(利)」と「悪いことはしない(義)」のふたつの気持ちが浮かびます。

彼が「義」を選び、お店の人に「お金を忘れて買えませんでした」と正直に話せたなら、彼はまさに「君子」です。

もし「バレなければいいや」と盗んでしまえば、その場では得をしたかもしれませんが、大切な信頼や誠実さを失ってしまいます。

このたとえは極端に思えるかもしれませんが、大人になっても「正しさ」と「利益」の間で揺れる場面はたくさんあります。

言葉の背景

この言葉が記された「里仁りじん」篇は、「人としてどうあるべきか」をテーマにした章です。

孔子が生きた春秋時代の中国は、諸侯が力を競い、争いも絶えない混乱の時代でした。

そうした中で、孔子は「人が正しく生きる道」を強く求めました。

「世の中が混乱しているからこそ、人の正しさが大切だ」

「自分だけ得をしようとすれば、社会全体が壊れてしまう」

孔子はそう信じていたからこそ、「義を先に」という教えを重んじたのです。

現代への応用

私たちは日々、小さな選択を積み重ねながら生きています。

ちょっとズルをすれば得する場面、誰かに嘘をつけば楽になる場面。

でも、そうしたときに「義」を思い出せるかどうか。

それが、自分自身への信頼、そして人との信頼関係をつくる礎になります。

まとめ

君子くんしさきにしてのちにす】
正しいことを第一に考え、利益はその後に――。
短い言葉ですが、生き方の芯をつく教えです。

この言葉を知っているだけで、人生の分かれ道で少し立ち止まって「自分はどうありたいか?」を見つめ直せるはずです。