
皆さんは、何かを決めるとき、どんな基準で判断しますか?
「自分にとって得かどうか?」それとも「正しいことかどうか?」
この問いに対する答えが、今回ご紹介する論語の一節に関係しています。
「君子は義に喩り、小人は利に喩る」
これは、孔子が弟子たちに教えた言葉のひとつです。
それでは、この言葉の意味や背景を、たとえ話とともに見ていきましょう。
言葉の意味
この言葉を現代風に訳すと、次のようになります。
立派な人(君子)は「正しいこと」を基準に行動し、
小物な人(小人)は「損得」を基準に行動する。
「君子(くんし)」とは、道徳心があり、人として立派な人物のこと。
「小人(しょうじん)」とは、目先の利益ばかりを考える小さな人のことです。
つまり、君子は「何が正しいか?」を考えて行動し、小人は「自分にとって得かどうか?」を考えて行動するということです。
たとえ話:「二人の商人」
昔、ある町に二人の商人がいました。
Aさんは、質の良い商品を適正な価格で売ることを大切にしていました。
「お客様にとって良いものを届けることが、商人としての誠実さだ」
と考え、時には利益を削ってでも品質を守りました。
一方、Bさんは、とにかく儲かることが第一。
質の悪い商品でも、見た目を良くして高値で売りつけました。
「売れればいい。自分が儲かれば、それで勝ちだ」
と考えていました。
ある日、大きな嵐が町を襲いました。
市場に出回る商品が減り、人々は生活用品を必死に探していました。
Bさんはここぞとばかりに値段を吊り上げ、困っている人々から大金を巻き上げました。
Aさんは、「こういう時こそ助け合うべきだ」と、普段と変わらない価格で売り続けました。
嵐が去った後、人々はどちらの商人を信頼したでしょうか?
Aさんの店には、「この人なら安心だ」とたくさんの人が訪れました。
一方、Bさんの店は「もう二度と買わない」と誰も寄り付かなくなり、結局商売が成り立たなくなったのです。
この話のAさんが「君子」、Bさんが「小人」と言えるでしょう。
君子は「正しさ(義)」を優先し、小人は「自分の利益(利)」を優先した結果、長い目で見ればAさんのほうが成功したのです。
起源と背景
この言葉は、孔子(紀元前551年~紀元前479年)がまとめた『論語』の「里仁」という篇(章)に記されています。
孔子は儒教の祖として、道徳や倫理を重視した思想を説きました。
当時の中国では、戦乱や権力争いが絶えず、多くの人々が「自分が得をするかどうか」で行動していました。
そんな時代だからこそ、孔子は「君子たる者は、損得ではなく正義を基準に生きるべきだ」と教えたのです。
まとめ
現代社会でも、私たちは日々「正しさ」と「利益」の間で迷うことがあります。
もちろん、生活する上で利益を考えることも大切です。
しかし、長い目で見たとき、本当に信頼され、成功するのは「義」を大切にする人です。
みなさんは、どちらの生き方を選びますか?
「君子は義に喩り、小人は利に喩る」
ぜひ、心に留めておいてくださいね!