065【義を以てこれを制す】(ぎをもってこれをせいす)

「正しさ」で心を動かせる人になろう

私たちはつい、相手を動かすために「力」や「権威」、「損得」で物事を判断しがちです。

でも孔子は、人を動かす本当の力は「義(=正しさ)」にあると説いています。

義を以てこれを制す

つまり、「人を導くときには、正しさによってこれを制すべきである」という意味です。

これは今の時代にも通じる、人間関係の根っこにあるべき“心のあり方”を教えてくれる言葉です。

たとえ話で見る

ある学校に、2人の先生がいたとします。

  • A先生は、厳しいルールと罰で生徒を黙らせます。みんな怖がって従いますが、心から納得はしていません。
  • B先生は、生徒一人ひとりに目を配り、何が正しいかを一緒に考えます。生徒は自然と信頼し、自分から行動するようになります。

一見、A先生のほうが「制している」ように見えますが、孔子が理想とするのはB先生のような人。

つまり、「義=正しさ」によって、相手の心に響かせ、行動を引き出すことが本当の“制す”ということなんです。

出典と意味

この言葉は『論語』の顔淵篇がんえんへんに登場します。

是を導くに政を以てし、これを斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずること無し。これを導くに徳を以てし、これを斉うるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格(ただ)し。

ここで孔子は「法律や罰(刑罰)で人を管理すると、人は罰を避けるだけで恥を知らない。

徳や礼=正しさや思いやりで導けば、人は自ら正しくあろうとする」と語ります。

つまり、「義=人としての正しさ」をもって人を動かすことが、真の指導であると強調しているのです。

現代へのヒント

この言葉は、学校や家庭だけでなく、職場やチームでも役立ちます。

  • 上司が「正しいからやろう」と言えば、部下は納得して動く
  • リーダーが「みんなにとってこれが誠実なやり方だ」と語れば、仲間は信頼してついてくる

逆に、ルールや強制だけで動かそうとすると、表面的にはうまくいっているようで、長続きしません。

信頼を築く力=“義”の力

正しさを根拠にすることで、人の心を動かし、行動が生まれます。

おわりに

もし今、人間関係や組織運営で悩んでいるなら、力や損得ではなく「義(正しさ)」を基準にしてみるのはいかがでしょうか?

  • 自分が信じられる“正しさ”を言葉にしてみる
  • 相手の目線に立って、納得できる説明をしてみる
  • ルールより“信頼”を大切にしてみる

孔子の教えは、時代を超えて「人の心は、正しさにこそ動かされる」と教えてくれているのです。