「もうやるだけのことはやった」
そう言える自分になれたら、あとは結果がどうであれ、少し心が軽くなるかもしれません。
今回は、そんな“覚悟と静かな信念”を表すことわざ、
「人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ)」
について、たとえ話や起源もまじえてご紹介します。
◆ 「人事を尽くして天命を待つ」の意味
このことわざの意味はとてもシンプルです。
できる限りの努力をしたあとは、あとは天の意思(運命)に任せよう。
つまり、「自分にできることはすべてやった。そのうえで起きる結果は、もう天にまかせるしかない」といった、努力と潔さの両方を含んだ言葉です。
自分の力でどうにもできないことに悩みすぎず、まずは全力を尽くすことの大切さを教えてくれます。
◆ たとえ話でイメージしてみよう
🎓大学受験に挑むユウタの話
ユウタは高校3年生。
第一志望の大学は難関で、周りからも「安全校を狙ったほうがいい」と言われていました。
でもユウタは、「どうしてもこの大学で心理学を学びたい」と決意。
夏休み以降はスマホを封印し、毎日10時間以上の勉強漬け。模試の点数も少しずつ上がっていきました。
そして迎えた本番当日。
「ここまで頑張ってきた自分を信じよう。もう悔いはない」
そんな気持ちで、試験会場に向かいました。
――結果が出るまでは不安もあります。
でも彼はもう、精一杯努力したことを知っています。
「人事を尽くして天命を待つ」
ユウタの姿は、この言葉そのものです。
◆ 起源と歴史的背景
この言葉のルーツは、**中国の古典『書経』や『孟子』**といった古代儒教の文献に見られますが、
現在の形で広まったのは、日本の戦国時代~江戸時代にかけてとされています。
特に有名なのが、徳川家康の遺訓に近い精神として紹介される場面です。
また、西洋にも非常によく似た表現があります。
“Do your best and leave the rest to God.”(最善を尽くし、あとは神に委ねよ)
時代も国も違っても、「自分にできることはすべてやって、あとは運命にゆだねる」――
この姿勢は、世界共通の知恵なのかもしれません。
◆ こんなときに使える!
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試験やコンペなど、本番を控えているとき
→「ここまでやったんだから、人事を尽くして天命を待つしかないね」 -
ビジネスのプレゼン前に、緊張している仲間に
→「もう準備は万端だろ?あとは人事を尽くして天命を待つだけだよ」 -
受験生・スポーツ選手など、努力を重ねた人への励ましに
→「君の努力、ちゃんと見てきたよ。人事を尽くして、天命を待とう!」
◆ おわりに
人生は、コントロールできることと、できないことの連続です。
「どうしよう、うまくいくかな…」と不安に飲まれそうなとき、まずはこの言葉を思い出してみてください。
やれることは、すべてやった?
それなら、もう大丈夫。天に任せよう。
人事を尽くして天命を待つ――
それは、全力で生きた人だけが持てる、いちばん強い“心の余裕”かもしれません。